report 平成30年 予算特別委員会速記録第三号 2018年3月14日

発言の抜粋

吉原副委員長
 石川良一委員の発言を許します。
〔吉原副委員長退席、委員長着席〕
石川委員
 私の方からは、まず、国による都の財源収奪についてお伺いをいたします。
 地方分権は、行政において統治権を中央政府から地方政府に移管することであり、国から地方への地方分権だけでなく、地域がそれぞれの事情に合った、より適切で柔軟な統治を行うための権限や財源の移譲も含まれるわけであります。
 地方分権運動は、一時は分権を超え、地方主権をというような声まで出るほど盛り上がったわけでございます。
 そこで、地方分権の現状について、都の認識についてお伺いいたします。
多羅尾総務局長
 地方分権は、地域の実情に応じ、地方自治体がみずからの判断と責任において自主的、自立的な行財政運営を行い、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を目指すものであると考えております。
 そのためには、地方が地域の課題に自主的に取り組めるよう、地方が果たす役割と権限に見合った財源を一体として確保していく必要があることと考えております。
 これまでの地方分権改革により、事務権限の移譲や、例えば、地方への計画策定の義務づけなどの見直しが行われましたが、いまだ十分とはいえません。
 また、国から地方への税源移譲についても、十年前の三位一体改革以降行われず、役割と権限に見合う財源が措置されていないなど、地方分権は道半ばであると認識しております。
石川委員
 国と地方が協議を行う国と地方の協議の場に関する法律が平成二十三年四月に成立をし、地方六団体代表と内閣官房長官をトップとする国との協議の場が制度化をされたわけであります。交渉の場は保障されたわけであります。
 また、三位一体改革は、国庫補助負担金の廃止、縮減、税財源の移譲、地方交付税の一体的な見直しであったわけでありますけれども、ふたをあけてみますと、地方交付税が五・一兆円削減をされるということで、この分権運動というのは急速にしぼんでしまったわけであります。
 本来であれば、国と地方との関係で、実際の仕事は地方が六、国が四であり、財源も地方六、国四でなければならないわけでありますけれども、依然として、地方が四、国が六のままとなっており、権限も財源の移譲も進んでおらず、しかも、都から財源を国が奪い取るという、まさに時代に逆行するものであるわけであります。
 都財政は、バブル崩壊とリーマンショックを乗り越え、ここ数年、企業収益の堅調な推移などにより、税収を確保できているわけですけれども、これに目をつけた国から、地方自治体間に生じる税の偏在の是正という名目で貴重な税金を奪われてしまったわけであります。
 国が主張する地方間の税収格差というのは実際にはどうなっているのか、確認の意味を含めてお伺いいたします。
武市財務局長
 国が主張する地方間の税収格差は、住民一人当たりの地方税収のみで比較を行っておりまして、この場合、最大の東京都と最小の沖縄県との間では二・五倍の格差が生じております。
 しかしながら、地方税収に、税収格差の調整機能を果たします地方交付税を加えて比較をいたしますと、東京都と全国平均の住民一人当たりの金額は同水準となります。この場合、沖縄県の金額が東京都を大きく上回る結果ともなります。
 このように、国がいうところの税収の格差は、地方交付税制度で既に解消されておりまして、国が都の財源を奪う合理的理由はないものと考えております。
石川委員
 地方交付税制度によって、歳入は、都が突出をして高いということではないということなわけであります。このパンフレットにも書かれているわけでありますけれども、残念ながら、国民にも都民にもほとんど知られていないというのが実態でございます。
 そして、三十一年度の税制改正で、理不尽なこの収奪はさらに拡大をすることが懸念をされているわけであります。東京都議会、東京都、区市町村を初め都民の皆さんが、まず結束をして声を上げていかなければならないわけであります。
 かつて国が進めようとしておりました首都移転計画を阻止したという経験があるわけであります。平成十四年に、東京都議会や東京都、首都移転に断固反対する会が共同で首都移転断固反対総決起集会を開催いたしました。私も参加させていただきました。こういった大会もぜひ開催すべきであることを表明しておきたいと思っております。
 また、長期的な視点に立ってみますと、国の財源収奪は都の諸施策に大きな影響を与えることになるわけであります。平成に入ってから六兆円もの財源を収奪されたわけであります。
 歳出について、今後二十五年で、社会資本維持更新経費で三・二兆円、社会保障関係経費は累計で十兆四千億円増加し、防災にかかわる経費は、今後十年で三・五兆円必要と推計をされているわけであります。さらに、昨年十二月には、オリンピック・パラリンピックの大会経費、一兆三千五百億円のうち六千億円負担をすることになったわけであります。
 東京都は、歳出については将来予測を立てているわけでありますけれども、歳出だけではなくて、都の歳入を含めた長期的な財政の見通しについてお伺いいたします。
武市財務局長
 都財政は、歳出面では、待機児童対策、超高齢社会対策、災害に強いまちづくりなど膨大な財政需要を抱えております。
 一方、歳入面では、都税収入が過去には一年間で一兆円以上の減収を経験するなど、景気変動の影響を受けやすく、また、地方交付税の不交付団体でもあることなどから、非常に不安定な財政構造にございます。
 こうしたことから、長期の歳入見通しを立てるということはなかなか難しい点がございますけれども、平成三十年度予算では、事業評価によりまして、無駄の排除をより一層徹底したほか、都債の発行抑制、基金の積極的な活用などによる財源確保を図るなど、中長期的な視点に立った取り組みを行っております。
 引き続き、社会構造の変化にも適応し得る持続可能な財政運営を行っていくため、創意工夫を凝らした自己改革を推し進めながら、中長期にわたりまして財政の健全性を確保していきたいと考えております。
石川委員
 二〇二〇大会後の財政状況を都民は非常に心配をしているわけであります。歳入と歳出は常に一体なわけでありまして、節目節目で長期的な見通しを立てていく必要があるだろうと思います。
 都民にも、財政計画を節目節目でしっかりと情報発信をする必要があるというふうに思っております。また、国の税の収奪に対する牽制という意味にもなるというふうに思っております。ぜひ要望しておきたいと思います。
 次に、都の少子化対策としての結婚支援事業についてお伺いいたします。
 これは、一般質問等々を含めて、いろんな意見があるわけでございますけれども、私はもう前から、この支援が必要だという立場で質問をさせていただきます。
 去る二月二十日に開かれましたフォーラム、結婚について知事と語ろうが都庁の中で開催をされたということは私は画期的なことだというふうに思っております。国も少子化の流れに歯どめをかけるために、結婚、妊娠、子供、子育てに温かい社会づくりに社会全体で取り組んでいく課題として、少子化克服戦略国民会議を本年一月に立ち上げたばかりであります。
 私もこの予算委員会で二年前に、舛添知事に対して結婚支援事業の必要性について訴え、質問をさせていただいたわけでありますけれども、前向きな答弁はほとんどいただけませんでした。
 都は、結婚支援として、この二年間にどのような施策を推進してきたのか、お伺いいたします。
遠藤政策企画局長
 都では、結婚支援のあり方を検討するため、平成二十八年四月に庁内プロジェクトチームによる全庁横断的な検討に着手をいたしまして、昨年三月に第一弾の施策として、結婚応援イベント、TOKYO縁結日二〇一七を開催いたしました。
 今年度は、結婚に向けた機運醸成のための動画を作成するとともに、結婚支援に資する取り組みとして、船で東京の島々を訪れる婚活ツアーを企画する旅行事業者への助成を行うほか、結婚をテーマとした知事と語る東京フォーラムを開催するなど、さまざまな施策を実施してまいりました。
石川委員
 二年前は、結婚支援の担当の局さえ、まだはっきりしていなかったということからしますと、一歩前進だというふうに思っております。
 私もこのフォーラムに参加をさせていただきましたけれども、パネリストとして参加をしておりました中央大学の山田昌弘教授は、婚活という言葉を生み出した、生みの親であるわけですけれども、少子化の主因は未婚者の増大にあることを早くから指摘をしてきているわけであります。
 著書の中で、少子化の主因は未婚者の増大にあることがなかなか受け入れられない。一九八〇年から九〇年代の少子化は、ほぼ一〇〇%、未婚率の上昇によって説明できる。二十一世紀に入ってから、既婚者の子供の数も減少傾向にはあるけれども、それでも少子化の七割は未婚者の増大に起因をしている。そして、これは人口学者など研究者の間では常識となっている事実である。しかし、実際に保育所の不足など、既婚夫婦にとっての子供の育てにくさばかりが報道されてきた。少子化の原因としての未婚者の増大は、近年ほとんど語られてこなかった。学会も同じで、結婚に関する研究は、社会学でも経済学でもほとんど行われてこなかった。政策の現場でも、結婚をどうするかは全く手がつけられてこなかったというふうに指摘をしているわけであります。
 結婚、妊娠とつながっていくわけでありますけれども、我が国では、結婚して子供を産む数は、一九七二年で二・二〇人、二〇一五年で一・九四人となって、若干は減っております。しかし、この四十年の中からしますと、いわば結婚すればおおむね二人の子供をもうけるという数字は、そんなに大きくは変わっていないわけであります。ですから、少子化の直接の原因は、結婚数が減っているということが、もうデータ上も裏づけられているわけであります。
 一方、フランスを初めヨーロッパなどの諸国では、実質婚による出生がもう主流になりつつあるわけでありますけれども、我が国では、実質婚による出生率は二%程度と。いわば入り口の結婚というところで、それが壁になってしまっているということがもう明らかなわけであります。
 しかし、政策の現場では、なかなかまだ手がつけられていないという状況でございます。
 知事は、国会議員時代、婚活・街コン推進議員連盟の会長も務められておりました。知事の結婚支援に対する基本的な考え方をお伺いいたします。
小池知事
 今ご指摘がございましたように、私は国会議員時代、自民党の婚活・街コン推進議連を立ち上げまして、会長を務めてまいりました。結婚支援というのは非常に重要だということで、以前から率先して取り組んでまいりました。
 ちなみに、ほかの議連の会長を務めてきたのが、LED普及、液体ミルク、無電柱化ということで、まさしく今、東京都で取り組んでいる項目ばかりでございます。
 結婚というのは、個人が自分の人生観に基づいて決めるものでございますけれども、結婚を希望しながらも一歩踏み出せないでいるという、そういった方々の背中を後押しをするということも重要だと考えておりまして、結婚に向けた機運醸成に取り組んでいるところでございます。
 一方で、都でこの結婚支援をすることが少子化対策そのものというものでもございません。しかしながら、今ご指摘がございましたように、フランスの事実婚などと違いまして、アジア、例えば韓国も台湾も日本も、ほとんどが少子化の対策に悩んでいる部分の国々でありますけれども、こういった、日本を含めまして、結婚してから出産する方が大多数とのデータもございます。よって、結婚する方がふえれば、結果といたしまして少子化対策にも寄与するということだと思います。
 また、結婚を後押しするといっても、数多くの課題がございます。例えばライフワークバランスを推進しなければならない、若者の就職支援が必要、雇用が安定化しなければならない、待機児童の対策などなど、結婚しやすい環境の整備に資する取り組みを幅広く総合的に進めるということが肝心だと思います。
 よって、個人の価値観や人生観に十分配慮しながら、結婚を希望する方の支援に積極的に取り組んでまいりたい、これが私の姿勢でございます。
石川委員
 当然、結婚しない自由ももちろん当然あるわけですけれども、少子化がもう既に社会的な問題になっているわけで、何らかの施策を積み重ねていく必要があるわけであります。
 しかも、結婚を望んでいてもできないということで、さらにまた、出会い、結婚というふうに進んでいくわけでありますけれども、出会いそのものもなかなか少なくなっているという状況なわけであります。
 婚活支援事業は、大都市では民間事業者が多いということで、料金が高いために活用できない人も多くて、多様なニーズに応えていく必要があるわけであります。他の道府県では、地域に密着した自治体が行う結婚支援事業について、料金が安く、自治体の関与によって安全を得られるということもあって、成婚率やカップル誕生率が高いというような評価もあるわけでございます。
 東京にも、結婚の希望を持ちながら一歩前に踏み出せない独身男女に支援をする拠点が求められているわけであります。
 武蔵野市では、社会福祉協議会が結婚相談事業の一環として交流会を開催したり、武蔵府中法人会が結婚支援事業を行い、日野市役所は出会いの場創出事業を実施するなど、自治体も動き始めております。
 都には、区市町村や民間事業者、ボランティア等と連携をし、力を合わせられる拠点を立ち上げることが求められているわけであります。
 都の見解をお伺いいたします。
遠藤政策企画局長
 結婚支援を効果的に進める上で、さまざまな主体と連携していくことは重要でございます。
 都においても、包括連携協定に基づき、保険会社が都庁展望室で行った婚活イベントを後援するなど、民間企業と連携した取り組みを始めております。
 来年度は、新たにポータルサイトを開設いたしまして、結婚に関するさまざまな情報を総合的に提供していく予定でございます。そのポータルサイトにおいて、区市町村やNPOなどの非営利団体が都内で開催する結婚関連イベントの情報を掲載するなど、各主体との連携を図ることにより、結婚支援のための拠点的な機能を果たしてまいります。
石川委員
 ありがとうございます。ぜひ前に進めていただきたいと思います。
 若い人が結婚したくてもできない理由は、雇用、収入、あるいは子育て等を含めた将来に対する不安、たくさんあるわけでございます。しかし、この問題をそのまま放置しますと、ひとり暮らしの増加、ひいては孤独の問題、最近、孤独の問題が大きな話題になっております。さらには孤独死というようなことで、問題がどんどんと連なっていくわけであります。
 結婚は入り口であり、その先の妊娠、出産、育児、教育、子育てということで、子育ての安心をしっかりと用意をしていくということが今求められているということを改めて指摘をさせていただきたいと思います。
 次に、都と区市町村長との連携についてお伺いをいたします。
 昨年度に続きまして、都議会のみならず、自治体や業界団体の予算要望のヒアリングに知事自身が直接当たってきたわけであります。予算編成のために各種団体の要望を受ける姿をオープン化し、実施をしていくことは、都民の皆さんからお預かりした税金がどのようなプロセスで予算化をされていくのか、見える化していくことは重要であります。
 また、予算要望や政策提言を受ける機会や場は、都民にとっては多いにこしたことはないわけであります。どの団体を指名するのか、あるいはまた、団体を固定するのか等課題はあるわけでございますけれども、この見える化をぜひさらに進めていただきたいと思っております。
 その一つとして、市町村長との直接の意見交換についてどう評価をするのか、また今後も継続をするのか、お伺いいたします。
小池知事
 お答えいたします。
 東京が抱えておりますさまざまな課題の解決には、現場の諸課題に向き合って日々尽力されておられる区市町村長との連携協力が不可欠でございます。その点については、石川委員は長年稲城市長を務められ、まさしく説得力がある今ご質問だったかと思います。
 私が知事に就任した昨年度に引き続いて、今ご指摘のように、先般、全ての市町村長の皆さんと個別に意見交換を行いました。そして、各団体が重点的に進めておられます待機児童対策などの取り組みであったり、今後の行財政運営上の課題、要望などを直接伺うことができました。
 この貴重な意見交換を通じまして、各市町村が、人口の減少、少子高齢化の進展、そして産業振興など、それぞれの地域の課題の解決に向けて創意工夫を凝らして取り組まれている状況も改めて認識することができました。
 こうやって、市町村長の皆様とのコミュニケーションの機会を引き続き大切にしていきたいと思います。そして、多摩・島しょ地域の発展に全力を尽くしてまいる所存でございます。
石川委員
 今ご指摘をいただきましたけれども、私も二十年市長を務めさせていただきました。鈴木知事、青島知事、石原知事ということで三人の知事と一緒に仕事をさせていただきましたけれども、知事と直接一対一で要望を行う、そういう機会というのは残念ながら一度もありませんでした。そういう意味では、今回の、知事が首長と直接話し合いをする、大変すばらしいことだと思っております。
 公式の市町村協議会の役員というようなことで、要望活動を行うことがあるわけでございますけれども、なかなか実際には、今までは限られていたわけであります。ぜひしっかりと継続をしていただきたいと思います。
 また、市町村長の共通した要望であります市町村総合交付金が五百五十億円に増額をされたということ、これについても改めて高く評価をさせていただきたいと思います。
 一方では、特別区長との意見交換会も都庁で開催され、知事も出席をしました。知事は、税制など国が東京を狙い撃ちするような不合理な措置に対して、オール東京で国に強く働きかけていきたいと連携の重要性を強調したわけであります。特別区長会からは、受動喫煙防止対策、子育て支援対策、東京二〇二〇オリンピック・パラリンピック関連や財源の確保など各区で共通する課題のほか、まちづくり、地域防災、交通整備など、地域特有の課題についても要望、意見が出されたわけであります。
 さまざまな事業を実行するには、区市町村長との連携が欠かせないわけであります。喫緊の課題である保育所等の待機児解消は、もう既に都立の保育園というのはないわけでありますから、実行するのは区市町村であり、また、受動喫煙防止についても、現場はそういうことになるわけであります。
 二十三区の首長の皆さんとの意見交換会についても、今後一対一の対応は考えておられないのか、お伺いいたします。
小池知事
 都区間の課題を議論する場といたしましては、私、そして副知事を初めとする都側の職員と、区側を代表する八名の区長で構成されております都区協議会、これは法律上設けられている機関でございます。
 私は、知事に就任をいたしまして、特別区長の皆様とより連携、そして協力することは不可欠と考えておりまして、この都区協議会とは別に、特別区長との意見交換会も新たに行うことといたしております。
 また、意見交換会では、特別区長の一人一人から、例えば防災、まちづくり、そしてまた、各地域で抱えているさまざまな課題につきましてご意見をいただいております。そしてまた、私からも特別区長一人一人の発言に対して意見を述べるというコミュニケーションの場となっております。
 今後とも、こうした意見交換会を初めとして、さまざまな機会を捉え、特別区長の皆様方から丁寧に意見を聞いてまいりたいと考えております。
石川委員
 代表として知事と会われますと、なかなか個別の自治体のことを持ち出すのは、場の雰囲気として難しい面もありますので、もし、区長の方から一対一でもお願いしたいということがありましたら、ぜひお受けをしていただきたいと思いますし、また、区長会、市長会、町村会、もうこれ定期的に開催をしております。もちろん知事は、当選後にご挨拶をされているのも承知をしておりますけれども、必要に応じて、知事みずからこういった会に足を運ぶことで、各自治体の首長との距離もうんと縮まるのではないかと、そして連携が前に進んでいくと、このように私は確信をしております。ぜひ対応方、お願いできればと思います。
 次に、無電柱化についてお伺いいたします。
 無電柱化の推進について、小池知事が知事に就任する一年前の二〇一五年七月に、東京大学大学院教授の松原隆一郎先生と共著で無電柱革命という本を出版されました。日本の景観やまち並みについて発言し続けている松原先生と、当時衆議院議員で自民党の無電柱化小委員会委員長を務めておられました小池知事の無電柱化にかける思いと文化論がしっかり詰まった本を、出版と同時に私も読ませていただきました。知事の無電柱化にかける思いは、選挙の公約というようなレベルにとどまるものでなく、防災や景観を含めた日本の改革に向けた日本人論である、そういった思想的な感銘を受けて読ませていただいたわけであります。
 これがその本でございますけど、実は、私も二〇〇七年に、稲城の覚悟という本を出させていただきました。この本を出すに当たりまして、景観論の第一人者であった、武道家でもあります松原隆一郎先生に、当時、私が市長を務めておりました稲城市まで来ていただいて、そしてまちの景観を見ていただいて、無電柱化を初めとする景観形成について対談をさせていただき、そのことを本にまとめさせていただきました。これがその本でございます。これはもう絶版ですから、売っているわけじゃありませんけど。
 知事の無電柱化に対する思いを改めてお伺いいたします。
小池知事
 無電柱化は、今お話がございましたように、良好な都市の景観の創出を図るだけでなくて、都民が安全・安心に暮らせるセーフシティーを実現するために重要でございます。
 私は、平成七年の阪神・淡路大震災を経験した一人でございますけれども、倒壊した電柱が避難や救助の妨げになったことを目の当たりにいたしました。ということで、景観のみならず、防災の観点から、この電柱の林を見直す必要性を痛感してまいったわけでございます。
 そのために、都道府県で初となる無電柱化推進条例を施行するとともに、都民の理解と関心を深めるためにイベントを開催するなど、私みずから無電柱化の意義や効果を積極的にPRいたしております。
 電柱の林は、余りにも目になれていて、皆さん気がつかないということが最大の問題でもございます。
 さらに、条例に基づく無電柱化計画でございますが、都といたしまして、今年度内に策定、都道はもとより、面的な広がりを持った無電柱化の推進に向けまして、区市町村に対する財政的、技術的な支援も行い、再開発などのまちづくりにおけます無電柱化の面的展開も強化をしてまいります。
 また、無電柱化が進まない最大の要因でございますけれども、先ほどの意識改革と同時に、費用がかかる、多額の整備費用がかかるということでございますが、事業者間の競争やイノベーションを促すということによって、コスト縮減を図ってまいりたいと思います。
 私は、無電柱化でこの東京をさらに世界に誇れる安全で美しいまちにしたい、ぜひ、そう思っております。よろしくお願いいたします。
石川委員
 無電柱化の必要性は、二つの大震災で、防災上の必要性については世の中で一定の理解を得られるようになりつつあるわけであります。法的にも、先ほど来のお話にありますように、二〇一六年十二月に無電柱化推進法が成立をし、都も条例をつくり、現在、無電柱化推進計画を策定中なわけであります。
 しかし、国民、都民の無電柱化推進に向けての政策の優先順位はまだまだ高いとはいえないわけであります。特に、住民生活に影響を与える道路の無電柱化の推進には、住民理解の後押しが必要なわけであります。
 無電柱化世論を高めるため、無電柱化のPRをどう進めていくのか、お伺いいたします。
西倉建設局長
 無電柱化を推進していくためには、都民の理解と協力が必要不可欠でございます。
 このため、今年度は、無電柱化推進条例の施行や、十一月十日の無電柱化の日に合わせまして、シンポジウムや啓発イベントを展開するなど、広く都民に無電柱化の意義や効果をPRしてまいりました。
 さらに、新たなパンフレットやPR動画などの広報ツールを作成いたしまして、SNSなど新たな媒体も活用しながら、これらを広く都民に発信いたしました。
 今後も引き続き広報活動の充実を図りまして、都民の理解と共感を得ながら、東京の無電柱化を強力に推進してまいります。
石川委員
 無電柱化は、まち全体の付加価値を上げていくことになるわけですが、土地区画整理事業等を進める事業主体や公共自治体は、その効果はわかっていても、事業費全体が膨らむことを懸念して、先送りをして、まちができてしまって、電柱だらけになってしまったというのが今までなわけであります。
 東京には、区市町で構成されます東京土地区画整理事業推進連盟も設立をされております。計画的なまちづくりを進めていただきたいと思います。
 土地区画整理事業を初めとする面整備で、無電柱化を積極的に推進すべきというふうに考えるわけですけれども、所見を伺います。
邊見東京都技監
 土地区画整理事業などのまちづくりでは、区域内の幹線道路から区画道路まで、道路の新設と同時に面的に無電柱化を進めることにより、低コストで効率的に整備を行うことが可能でございます。
 このため、平成三十年度から、土地区画整理事業において、補助の対象を都市計画道路のみならず、区域内全ての道路の無電柱化に拡充をいたします。
 また、都市開発諸制度を年度内に改定し、民間開発において、開発区域外の無電柱化を評価した容積率の割り増しなどを行ってまいります。
 今後は、これらの制度を活用し、地元自治体や民間事業者と連携しながら、さまざまなまちづくりの機会を捉え、無電柱化を積極的に推進してまいります。
石川委員
 今、進められようとしております都全体の無電柱化計画は、二十三区を中心として進んでいるわけであります。区部の都道の地中化率は五七%、多摩地域では一八%にすぎません。また、区市町村道の無電柱化率は二%にすぎないわけであります。区内では、緊急輸送道路やセンター・コア・エリア内にある道路を中心に無電柱化を進め、豊島区巣鴨地蔵通り商店街など区道の無電柱化を進めているわけであります。
 一方、多摩地域では、都市計画道路の整備も二十三区よりもおくれているわけで、当然無電柱化もおくれているわけであります。
 知事の無電柱革命の表紙をあけますと、すぐのところに、稲城市の若葉台地域の写真が、無電柱化された地域として紹介をされておりまして、松原先生からもまち並みを評価いただいたわけであります。地蔵通りが、ある種のモデルになり得るわけでありますけれども、多摩地域でも、無電柱化をすると防災上の安全性が高まり、また景観も美しいまちになると。また、こういった面的な整備のモデルというものもぜひ紹介をしていく必要があるんじゃないか、そういった指定もぜひ検討していただきたいと思っております。
 今般、土地区画整理事業で助成をするということで予算も計上されたわけであります。今後、活用しやすい制度としていくこと、そしてまた、さらに拡大をしていくことを要望しておきたいと思っております。
 次に、多摩ニュータウンを初めとする多摩南部地域の交通網整備とまちづくりについてお伺いいたします。
 東京の都市づくりのグランドデザインが昨年九月に取りまとめられました。二〇四〇年代を見据えながら、未来の東京をつくるため、常に成長を続ける都市を育てていきましょうと知事が高らかに表明をしているわけであります。
 また、本年二月に出された多摩ニュータウン地域再生ガイドラインでは、多摩ニュータウンの再生に向け、南多摩尾根幹線などの道路ネットワークや都営住宅団地の建てかえなど、施策の具体化への道筋についても明らかにしているわけであります。
 両計画とも、リニア中央新幹線が二〇二七年に開業し、多摩ニュータウンに近接する橋本に、品川から最初の駅ができることのポテンシャルを引き出すことを色濃く計画に反映しております。
 長期的なまちづくりを展望したときに、リニア中央新幹線神奈川県駅の開業が、多摩ニュータウンを初めとする多摩南部地域のまちづくりにどのような効果をもたらすのか、所見をお伺いいたします。
邊見東京都技監
 多摩には、高い技術力を持つ企業、大学、研究機関の集積や、圏央道による首都圏一帯とのつながりなどの強みがございます。
 リニア中央新幹線の整備では、多摩の新たな玄関口ともなる駅が、都外ではありますけれども橋本にでき、中部圏や関西圏とも直接結びつく、このことも生かして、長期的、広域的な観点からまちづくりを進めていくことが重要でございます。
 南多摩尾根幹線の整備を進め、リニア新駅へのアクセスを強化することなどにより、他圏域との連携を促進してまいります。多摩ニュータウンなどにおいて、新たな機能や産業立地が進むことで、経済の活性化や暮らしの質の向上などが図られると考えてございます。
石川委員
 リニア中央新幹線新駅については、都としても期待を強く持っているということがよくわかりました。ニュータウン再生のためにも、二〇二七年の後を見据えた交通網の整備の柱としていただきたいというふうに思います。
 また、あわせまして、小田急多摩線の唐木田駅から上溝までの延伸について、これは神奈川県側がさまざまな運動をしているわけでありますけれども、二〇四〇年を見据えたこのまちづくりという中では、しっかりと視野に入れていただきたいと思っております。
 次に、モノレールについてお伺いいたします。
 国の交通政策審議会の答申において、事業化に向けて検討などを進めるべきとされた六路線の整備には、総額一兆円との試算も出されております。東京都は、鉄道新線建設等準備基金を創設し、六路線に係る事業などの財源として六百二十億円を積み立てることとしたわけであります。
 町田市は、多摩都市モノレール多摩センター駅から町田駅までの延伸を見据え、町田市多摩都市モノレール基金を六年間で十五億円積み立てる方針を明らかにしました。交通政策審議会の答申と都の動向を勘案したものと思われます。
 都は、町田方面の延伸にはどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
邊見東京都技監
 多摩都市モノレールの町田方面や箱根ヶ崎方面への延伸は、開業区間と一体となって、多摩地域の活力や魅力の向上に資する路線でございます。
 整備に向けては、多摩都市モノレール株式会社の経営状況を踏まえ、コスト縮減策や収入確保策、事業採算性を見きわめながら検討を行う必要がございます。
 また、町田方面延伸については、導入空間となり得る道路整備も課題となってございます。
 これらの課題について、都は、沿線市、多摩都市モノレール株式会社とともに検討を進めてございます。
 今般、都は、検討を深度化するための調査費に加え、鉄道新線建設等準備基金を創設して、鉄道新線整備に対する都の取り組み姿勢を明確に示すことといたしました。
 引き続き、課題の検討を進めるとともに、今後、関係者との協議、調整を加速してまいります。
石川委員
 多摩都市モノレールの経営は、二十八年度、営業収益八十二億円、純利益十億円で、九期連続で黒字ということになっております。今後、大規模な改修などは想定されているわけでありますけれども、ぜひ将来を見定めながら前に進めていただきたいと思います。
 もう一つの大事業が、南多摩尾根幹線の早期開通でございます。
 沿線の土地利用の見直しを行いながら、多摩地域の広域拠点の事業として展開をしていくことが位置づけられております。
 南多摩尾根幹線は、既に用地の大部分が取得をされ、暫定二車線で通行されているわけでありますけれども、今後、四車線化の整備を行う区間の延長、幅員についてお伺いいたします。また、用地を取得した時期、面積についても伺います。
西倉建設局長
 南多摩尾根幹線は、多摩ニュータウン地域内の交通の円滑化を図るだけでなく、調布保谷線に接続し、埼玉県へ至るなど、都市間連携を強化する極めて重要な路線でございます。
 現在、二車線の暫定的な整備となっております稲城福祉センター入口交差点から多摩市総合福祉センター前交差点までの区間につきまして、四車線化の整備を進めることとしておりまして、その延長は約九・五キロメートル、計画幅員は四十三メートルから五十八メートルでございます。
 また、本路線の用地は、昭和四十年代から旧日本住宅公団などが多摩ニュータウンの整備に合わせまして、新住宅市街地開発事業等によりまして取得したものでございまして、その面積は約四十ヘクタールでございます。
石川委員
 都市計画決定前ということですから、前の東京オリンピックの開催前からもう先行買収している用地があるわけです。ですから、もう五十年以上、この用地が確保されているにもかかわらず、一部しかまだ土地利用がされていないという状況でございます。四十ヘクタールという莫大な面積がもう既に確保されているわけであります。そういうことで前に出していただきたいというふうに思います。
 そして、少し細部の話になりますけれども、現在、多摩東公園交差点から多摩市総合福祉センター前交差点まで、西側区間については、都市計画変更と環境アセスの手続に入っているわけでありますけれども、地元では早期の完成を望む声が大きいわけであります。
 環境アセスの手続を行っている西側区間の事業スケジュールはどうなっているのか、また、事業費についてもお伺いいたします。
西倉建設局長
 南多摩尾根幹線のうち、多摩東公園交差点から多摩市総合福祉センター前交差点までの延長約五・五メートルの区間につきましては、昨年九月から環境影響評価の手続に着手いたしまして、十月から十一月にかけまして、都市計画変更素案及び特例環境配慮書の地元説明会を開催いたしました。
 引き続き、環境影響評価などの手続を行い、地元への事業概要説明会等を経まして工事に着手いたします。その工事期間は、平成三十一年度から平成三十七年度までを予定しております。また、現時点での全体事業費は、百二十億円から百四十億円を見込んでおります。
石川委員
 三十七年度を目標に、ぜひ進めていただきたいと思います。また、掘り割りから平面ということで、工事費も圧縮をされているわけであります。こういった点も含めて、しっかりとこの尾根幹線、一日も早い竣工をぜひお願いをしておきたいと思います。
 あわせまして、これはオリンピックの自転車ロードレースのコースも想定をされているわけでありますけれども、スポーツタイプの自転車道の設置などについても課題かと思います。こういった新しい道路ですから、こういうものが走行できるようなこともぜひ検討していただきたいと思います。
 最後になりますけれども、多摩ニュータウンのまちづくりについてお伺いいたします。
 八王子から稲城市まで、多摩ニュータウンは、ニュータウンとオールドタウンが入りまじっているというような状況でございます。四十七年が経過した多摩市諏訪二丁目のように、建てかえが終わり、新たな息吹を感じるエリアや、また現在、建設中の住宅もあります。
 多摩都市モノレールや尾根幹線は、グランドデザインでも位置づけられ、また、松原先生から無電柱化について評価をいただいた若葉台地区などのまちなどもございます。
 多摩ニュータウンの発展に向けた知事の認識をお伺いをしたいと思います。
 あわせまして、知事には、若葉台地区を含めて、ぜひ現地を見ていただければなと思います。そのことを要請したいと思いますが、いかがでございましょうか。
小池知事
 ご指摘の多摩ニュータウンは、かつて先駆的に整備された生活基盤を時代に合わせてリニューアルする、そしてまた、道路交通ネットワークの整備に合わせて、将来を見据えたまちづくりを進めることが求められております。
 先般、多摩ニュータウンの地域再生ガイドラインも公表いたしております。ぜひとも、多様な世代が交流をして豊かに暮らせる、活力に満ちたまちへの再生に取り組んで、全国のニュータウン再生のモデルとしていきたいと思います。
 お話がございました若葉台地区なども含めまして、現地視察、知事就任以来、多摩地域も含めて、現場に足を運ぶことも多くございます。機会を捉えて検討したいと思います。
両角委員長
 石川良一委員の発言は終わりました。(拍手)

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