文教委員会速記録第四号 2017年3月17日
出席委員 14名
- 委員長
- 植木こうじ君
- 副委員長
- 栗山よしじ君
- 副委員長
- 里吉 ゆみ君
- 理事
- 川松真一朗君
- 理事
- 野上 純子君
- 理事
- 小宮あんり君
- 小松 久子君
- 宮瀬 英治君
- 石川 良一君
- 鈴木 錦治君
- きたしろ勝彦君
- 鈴木貫太郎君
- 古賀 俊昭君
- 高木 けい君
- 欠席委員
- なし
出席説明員
教育庁
- 教育長
- 中井 敬三君
- 次長
- 堤 雅史君
- 教育監
- 伊東 哲君
- 総務部長
- 早川 剛生君
- 都立学校教育部長
- 初宿 和夫君
- 地域教育支援部長
- 粉川 貴司君
- 指導部長
- 出張 吉訓君
- 人事部長
- 江藤 巧君
- 福利厚生部長
- 太田 誠一君
- 教育政策担当部長
オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務 - 安部 典子君
- 教育改革推進担当部長
- 増田 正弘君
- 特別支援教育推進担当部長
- 浅野 直樹君
- 指導推進担当部長
- 宇田 剛君
- 人事企画担当部長
- 鈴木 正一君
本日の会議に付した事件
意見書について 教育庁関係
予算の調査(質疑)
- 第一号議案 平成二十九年度東京都一般会計予算中、歳出、債務負担行為 教育庁所管分
付託議案の審査(質疑)
- 第三十九号議案 東京都教育委員会の事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例
- 第四十号議案 学校職員の定数に関する条例の一部を改正する条例
- 第四十一号議案 東京都立学校設置条例の一部を改正する条例
報告事項(質疑)
- 東京都教育施策大綱について
- 東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画の策定について
請願の審査
- 1. 二八第四三号 全ての子どもに豊かな教育を保障することに関する請願
- 2. 二八第四五号の一 東京の全ての子どもたちに行き届いた教育を進めることに関する請願
- 3. 二八第四八号 特別支援学校の寄宿舎の存続・充実を求めることに関する請願
- 4. 二八第四九号の一 子どもの貧困対策を求めることに関する請願
発言の抜粋
- 石川委員
- 本委員会では初めての質疑ということになります。今まで委員会の中で議論されたことと重なることもあるかと思いますが、ご容赦いただきたいと思います。
何点か質問させていただきます。
まず、校庭芝生化についてお伺いをいたします。
ご存じのように、東京都は、教育環境の一層の充実のため、都内全公立小中学校の校庭等の芝生化を平成十九年度から推進してきております。教育上の目的としましては、学校に芝生のスペースを設置することで児童生徒の日常的な運動量が増加をし、たくましく健康な体を育むことができるだけでなく、理科教育、環境教育面での観察などを通じて、体験的な学びの機会が増加をするとしております。
また、芝生の活用と維持管理作業を通じて、幅広い世代との交流により子供の社会性が身につくようになり、地域と学校とのきずなが深まり、地域の力を取り込んだ学校の活性化につながるとしております。
また、地球温暖化対策の一環として、学校の校庭の緑化や屋上緑化、壁面緑化によってヒートアイランド現象を少しでも和らげることができるわけでありまして、また、緑の景観を拡大することも、特に都会で生活をする人々にとっては潤いを与えることにも通じるわけであります。
そこで、校庭芝生化補助事業の現状についてまずお伺いをいたします。 - 粉川地域教育支援部長
- 平成二十八年度までに校庭芝生化を実施した公立小中学校は四百九十五校でございます。
芝生化の効果として学校からは、雨が降った後、芝生化する前より早く校庭を使用でき、子供たちの外遊びの時間がふえた、また、地域の人とともに行う芝生の補植作業等を通じて、学校と地域とのつながりが深まったなどの声が寄せられております。
一方で、養生期間中の校庭の使用制限や維持管理の担い手となる人材の確保などの課題があり、校庭芝生化に踏み切れないとの指摘もございます。 - 石川委員
- 緑の学び舎づくりの事業補助といたしましては、基本的には補助対象芝生化面積二百五十平方メートル以上で、当初の芝生化のための投資は都が負担をする仕組みとなっております。また、芝生の拡張に対する同一学校の二回目の事業も補助対象として、ランニングコストに係る区市町村の費用負担は対象経費の二分の一となっており、屋上や壁面緑化も補助対象となっているわけであります。
知事は、さまざまな事業全体のPDCAサイクルを強化することを既に表明しているわけであります。来年度で十年という節目を迎えるわけでありまして、校庭芝生化事業の事業効果などを明確にしていく必要があるというふうに思っております。学校芝生化事業の評価を実施する必要があると考えますが、考え方を伺います。 - 粉川地域教育支援部長
- 都教育委員会では、これまで、区市町村教育委員会や学校へのヒアリング等を通じて校庭芝生化における課題を把握し、維持管理経費の補助対象期間を延長するなど対応してまいりました。
平成二十九年度予算では、さらにこれらの意見を反映し、芝生のすり切れや消失等の課題に対応し、補植作業を補助対象とするなど、維持管理の充実を図る内容としております。
今後とも区市町村教育委員会と連携し、学校の置かれた現状や芝生化の意向などを踏まえ、校庭芝生化に取り組んでまいります。 - 石川委員
- 都内の学校全体でまだ二五%の普及率でありまして、また、財政状況や自治体や学校の施策の優先順位で、取り組みたくても取り組めないというような学校もあるわけでございます。また、生態系が豊かであればあるほど雑草の種類もふえるわけであります。ですから、雑草を校庭芝生化に取り込むというような鳥取方式などもございまして、多摩地域などはその地域に合った方式を推進していただきたいと思います。
何といいましても、学校を中心として地域力、コミュニティ力の活用と育成のためにも、今後、目標数値を設定し、学校芝生化を引き続き推進していただくことを要望しておきたいと思います。
次に、英語村についてお伺いいたします。
外国語、特に英語は中学、高校と六年間学習し、さらに大学に進む数年、人によっては十年間学習する時代が長く続いてきたわけであります。
しかし、読み書きの能力に比べて会話力が身につかないということが大きな欠点として指摘をされており、今はその反省から、会話力を中心にコミュニケーション能力を身につけさせる教育の必要性が強く求められてきました。
特に二十一世紀に入って、今まで以上に人、物、お金が自由に世界を動く国際化時代を迎え、グローバル人材へと成長していくためには、単に読む、書く、聞く、話すの英語力にとどまらず、英語を使って積極的にコミュニケーションしようとする態度や、日本人としてのアイデンティティー、豊かな国際感覚などを身につけることが必要でございます。こうしたことを児童生徒が習得していくには、座学の授業だけでなく、体験や実践を効果的に活用することが重要であります。
こうしたことから、民間においては、国内にいながら、外国とほぼ同様な環境をつくり、その中で英語学習を行う英語村が注目をされております。施設内では、外国生活を疑似体験し、自分の英語力を知るとともに、英会話になれ親しむよい機会になり、その後の学習意欲向上の契機になるなど、高い評価がなされております。
しかし、都内の多くの児童生徒が利用できる状況にはないわけであります。東京都は、東京版英語村構想を打ち出し、動き始めたところでございます。東京都教育委員会は、英語村の開設に向けてタイムスケジュール等、今後どのように進めていくのかお伺いいたします。 - 宇田指導推進担当部長
- 都教育委員会は、教室での授業に加え、児童生徒が英語を使用する楽しさや必要性を体感し、英語学習への意欲を向上することができるよう、仮称英語村の開設に向けて整備を進めております。この英語村の整備、運営に当たりましては、都による財政支援のもと、民間事業者が事業主体として独立採算により行うこととし、本年四月からプログラム開発や施設改修等、具体的な準備を開始いたします。
また、英語村の候補につきましては、四月に都内各地区の教育委員や公立学校長等が一堂に集う教育施策連絡協議会で概要説明を行い、以降、詳細な内容について、各教育長会や校長連絡会等で情報を提供するなどして、学校における利用の機運を高めながら、平成三十年九月に開業いたします。 - 石川委員
- 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会開催まで三年半となり、グローバル人材育成の取り組みは都の喫緊の課題でもあります。世界一の都市東京の将来を支えるのは--今の児童生徒が手軽に利用できる英語村の実現は、この課題の前進に大きく貢献をするものと考えております。まさに二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックを見据えての英語村構想といえるわけでもあります。
同時に、二〇一九年ラグビーワールドカップが我が国で開催をされるわけであります。ボランティアの育成を初めワールドカップとオリンピック・パラリンピックを一続きのものとして、国際化に向けての対応力を育成していくわけであります。英語村の活用も、このワールドカップをも視野に入れながら、プログラムを組んではいかがかと思うわけであります。
都議会のラグビーワールドカップ成功議員連盟の総会にも、アンバサダーとして大畑選手なども参加をしておりまして、ラグビー協会からも英語教育を通じてラグビーを普及させることなど、しっかりと協力をしていただけるものと思っております。
二〇一九年ラグビーワールドカップ、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック開催に向けて、英語村における体験活動を充実させていくべきと考えますが、都教育委員会の所見を伺います。 - 宇田指導推進担当部長
- 二〇一九年のラグビーワールドカップを初め、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックといった国際的なイベントは、訪日外国人の増加を促すことになり、児童生徒が英語を使って多様な国際交流を行う絶好の機会となります。
こうした国際的なイベントと関連のある体験プログラムを英語村でも提供することにより、開催に向けた機運が醸成され、児童生徒の英語力向上との相乗効果が期待できるよう、今後、英語村を整備、運営する民間事業者とともに検討をしてまいります。 - 石川委員
- 事業そのものは民間事業者に委ねられるわけでありますけれども、しっかりと位置づけをしていただきたいと思います。
ラグビーワールドカップは、オリンピック・パラリンピックよりも長期に、しかも全国の会場で展開をされるわけであります。また、ラグビーそのものが英国で生まれ、英連邦を中心に競技が拡大をしていったスポーツでもございます。
一昨年、私もラグビーワールドカップ・イングランド大会視察に参加をさせていただきました。会場で多くの外国人サポーターと交流することもできました。この世界イベントをぜひ英語村運営のターゲットとして取り込んでいただくことを要望しておきたいと思います。
次に、郷土教育についてお伺いいたします。
社会経済のグローバル化が急速に進展するこれからの国際社会において、今後とも日本が発展をし、世界の人々から信頼され尊敬されるには、自国の歴史、伝統文化、そして郷土を知ることが極めて重要であることは論をまたないわけであります。
このようなことから、東京都教育委員会では、公共の精神や伝統と文化の尊重、我が国と郷土を愛する態度の育成を図るため、平成十七年度から全国に先駆けて日本の伝統文化理解教育を実施しております。また、平成十八年度には、都立学校では東京都独自の学校設定教科、科目、日本の伝統文化を開設するためのカリキュラム及び教材集を作成し、平成十九年度から実施をしております。さらに、平成二十年十二月には日本の伝統文化理解教育の一層の理解と推進を図るために、指導資料、日本の伝統文化理解教育の推進を作成し、都内公立学校の全ての先生方に配布をしたところであります。
日本の伝統文化について学ぶ機会の充実を図り、郷土に対する理解や愛情を深める教育を推進するためには、発達段階の早い時期から児童生徒の実態に応じて系統的、計画的な指導を実施することが特に重要でございます。そこで、東京都の小中学校において、児童生徒は郷土についてどのように学んでいるのか、現状について伺います。 - 出張指導部長
- 現在、都内の公立小中学校では、学習指導要領に基づき社会科や生活科、道徳、総合的な学習の時間などさまざまな授業において、児童生徒が郷土に関する学習活動を行っております。
こうした授業において児童生徒は、教科書や資料集、各地区の教育委員会が作成した副読本等から知識を学ぶことに加え、地域の博物館や郷土資料館で実際に展示を見たり、学芸員の説明を聞いたりするなどして、郷土の歴史や文化等に直接触れながら理解を深めております。 - 石川委員
- 児童生徒にとって生活に密着して郷土を知る教育が重要でございます。児童生徒たちの日常とも密接に関連したリサイクルのシステムや技術を知ることは、社会の仕組みや地域の歴史を学ぶ上でも有用であります。
社会にとって必要な財を生産するための原料から製品が生産され、それが市場に供給され、消費され、廃棄物として自治体等によって収集、運搬、保管、処理され、さらに、リサイクルされたり、最終処分されたりと、生産から消費、そして、廃棄、あるいはリサイクルされる過程を学習することは、民間企業、消費者、行政組織がどのような役割を担っていることかを知ることができる、まさに生きた教材でもございます。
環境への負荷を科学技術の進歩によって減らしていくという問題意識を醸成することもできるわけであります。そして、地域社会を知り、その課題に参加し、学び、その学習を科学技術や社会システムのイノベーションにつなげていくということにもつながり、まさに郷土と地域と環境と技術と政治の結びつきを学ぶ機会ともなるわけであります。
郷土について学ぶ教育を通じて児童生徒の環境保護への関心を高め、ごみ処理やリサイクル活動などの具体的な行動につなげるための小中学校の取り組みについてお伺いいたします。 - 出張指導部長
- 小学校の生活科では、例えば、まちを探検し、身近な人々と触れ合ったり、地域の公園などの施設を訪ねたりする活動や、身近な自然の変化や植物の成長の様子を観察する活動等を通して、児童が地域のよさや自然のすばらしさに気づき、地域や自然を大切にする心や態度を育んでおります。
また、多くの小中学校の総合的な学習の時間では、地域の環境問題について児童生徒が身近な生活の中から課題を見つけた後、学校や地域のごみの量を調べたり、ごみを減らす活動を地域の人々とともに行ったりすることを通しまして、環境保護やリサイクルの大切さについて体験的に学ぶ取り組みを行っております。 - 石川委員
- 児童生徒も異常気象の発生についてはみずからの体験で学ぶことができ、また、メディア等からの情報によっても地球環境問題の全体を知ることができ、地域の緑の減少など、地域の変化によって環境問題に対する関心が高まっているわけであります。
また、自分が住んでいる郷土ではどのような環境問題を抱えているのか、グローバルな視点とローカルな視点の両眼で環境問題に対して敏感にもなっているわけであります。
都教育委員会の指導方針にあるように、国際化が進めば進むほど、自分の国の歴史や伝統を知ることが国際人としての、当然身につけなければならない素養といえます。
同時に、自分が生まれ育った、あるいは今住んでいる郷土、地域の歴史や文化を知ることが必須といえるわけであります。例えば、身近な税の問題を地域の税務署や納税貯蓄組合などが中心となって税の作文コンテストなどを実施することによって、中学生が身近に税について学ぶ教育なども取り入れられているわけであります。
そこで、小中学校の環境教育を推進するために、都教育委員会の今後の取り組みについて伺います。 - 出張指導部長
- 都教育委員会は、児童生徒が環境保全への理解を深め、環境に配慮した行動ができるようにするため、来年度から新たに3Rや地球温暖化などをテーマとした環境教育に関する掲示用教材を作成し、全公立学校に配布してまいります。
また、各学校が掲示用教材を授業等のさまざまな場面で活用できるよう、教員用の指導資料や児童生徒用のワークシート等を提供するとともに、区市町村教育委員会の担当者を対象とした説明会を実施するなどいたしまして、環境教育の推進を図ってまいります。 - 石川委員
- 来年度から新たにポスターなどの掲示用教材を活用できるようにしたり、またワークシート等を提供するということで、大いに期待をしております。
例えば、ごみの分別の仕方一つとっても、自治体によって違いがあるわけです。リサイクルの歴史、そして自治体の歴史を知ることになるわけで、環境教育、特にごみ処理とリサイクルについて知ることは、身近に、しかも生活に密着した郷土の歴史を知ることになり、また自治体によってかなり差があるわけで、そういった差を知っていくことも、さらに郷土に対する理解や知識を深めていくことにつながっていくわけでありますし、また、自治体の政治の部分についても関心を深めていくことになるだろうというふうに思っております。さらに充実に努めていただきたいと思います。
次に、教職員の働き方の問題について伺います。
都民ファーストでつくる新しい東京二〇二〇実行プランの中で、東京都は、企業におけるライフワークバランスの実践に役立つ情報の発信や取り組みを進める上で、役立つプログラムなどで普及啓発を図ってきた。また、長時間労働の削減や休暇取得の促進など、働き方や休み方の改革を支援してきた。特に都は通勤時間や労働時間が長く、帰宅時間も全国で最も遅く、家事、子育ての担い手の偏り、介護需要の増加など、ライフワークバランスの実践に向けて多くの課題があると指摘をしているわけであります。
教職員の世界も当然この対象になるわけであります。都立学校において、教員の勤務実態の把握について伺います。 - 鈴木人事企画担当部長
- 都教育委員会では、服務監督権を持つ都立学校においては、毎年度、校長に対し勤務時間の適正な割り振りと運用に万全を期すよう通知書を発出し、校長がこれに基づき勤務実態の適切な把握、管理に努めております。
しかしながら、教員の職務は個々の自発性、創造性に期待する面が大きいため、教員一人一人の勤務実態を正確に把握することは困難でございます。そのため、国や都におきましても、一定期間を区切り教員へのヒアリング調査を行ってきたところでございます。 - 石川委員
- 先日、九日の総合教育会議では、小中学校の校長、副校長のなり手が不足をしていることから、現職の副校長からヒアリングを行ったわけであります。先進国の中でも日本の教員は世界一忙しいといわれ、校内管理業務を行う副校長はPTAとの連携など、学校内外の業務が山積をしております。
私なども地域のイベントに参加をしているわけでありますけれども、先ほど小宮理事からも指摘があったわけでありますけれども、校長や副校長を初め、関係する教職員の参加はここ十年ほどでかなり増加してきているということを実感して、特に日曜日、祝日、あるいはまた夜間等も地域行事に参加する姿を拝見して、これはなかなか大変だなというふうに思わざるを得ないわけであります。
今回、知事は、二〇〇六年、自殺をした西東京市の新任女性教諭の両親が起こしていた地方公務員災害補償基金を相手取った訴訟で、自殺は公務が原因という東京高裁判決に対しまして、上告をしないということを決定したわけであります。この決定は英断であり、この決定を支持するものであります。
校内の支援体制が問題であったという指摘がなされているわけでありますが、今回の問題では、亡くなられた先生の勤務実態について客観的に把握がされていたのかどうか、この点について伺います。 - 江藤人事部長
- 都教育委員会では、毎年四月に学校状況調査を行うとともに、五月から七月にかけて各区市町村教育委員会を訪問し、小中学校教員についての状況把握等に努めております。
本件の教員につきましては、亡くなられた後、生活指導についての悩みを抱えていたといった報告を受けておりますが、学校状況調査や当該市教育委員会の訪問時において具体的な勤務実態については把握しておりませんでした。 - 石川委員
- 今の答弁にありましたように、教員の働き方の実態がつかめていないというのが実情なわけであります。
平成二十七年度の包括外部監査報告書でも、教職員の退校時間の把握の必要があるとの指摘がされております。そして、教職員の中には、ライフワークバランスがとれずに、心身の健康に悪い影響を及ぼしている可能性があると指摘もしているわけであります。また、教職員の客観的な勤務実態等を事後的に確認することが難しいという状況にあるとしております。包括外部監査の指摘のとおりなわけであります。
まず、勤務実態を把握する上で、勤務時間をしっかり把握する必要があります。包括外部監査の意見も踏まえた上で、都教育委員会としてどのように対応していくのか伺います。 - 鈴木人事企画担当部長
- 平成二十七年度の包括外部監査でいただいた意見を踏まえ、都立学校においては、来年度、職員団体や関係部局との協議の上、IDカードを活用し、在校時間を把握するシステムを導入してまいります。
- 石川委員
- しっかりまず都教委において早期に実現をしていただきたいと思います。
また、区市町村と問題を共有することが必要なわけであります。区市町村立小中学校に勤務する県費負担教職員に対する服務の監督は、法令の定めにより、区市町村教育委員会が行うことになっております。
都教育委員会は、県費負担職員の勤務時間、勤務条件などは技術的な基準を定め、区市町村教育委員会に通知し、校長、副校長が適正に管理をするというふうな位置づけになっているわけであります。
しかし、公務災害の裁判は、都知事が地方公務員災害補償基金の支部長ということで、知事が訴えられていたわけであります。知事が所管をする総合教育会議に、教職員にはタイムカード、これはIDでもタイムカードでも技術的な問題ですからいいんですけれども、タイムカード等を使って正確に勤務を記録することが行われていないということを報告し、協議案件として議論することを、教育長、ぜひ提案していただきたいと思いますけれども、見解を伺います。 - 安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
- 三月九日に行われました総合教育会議では、教育管理職の確保について意見が行われました。都教育委員会としましては、総合教育会議の議論を通じまして、一般教員の働き方も含めた見直しが今後取り組むべき課題であるという認識を知事と共有したところでございます。
今後、都内公立学校における働き方の見直しを進めてまいりたいと考えております。 - 石川委員
- 情報は共有をされたということでありますけれども、いずれにしろ、この内容については、区市町村は区市町村の教育委員会の中でどう扱うのかという、こういう位置づけになっているわけでありまして、やはり都全体としてこの問題をどうしていくのかということについて、しっかりと総合教育会議等との、いわば政治とのかかわりも含めて、私は議論する必要があるんではないかなというふうに思いますけれども、重ねて教育長に伺います。
- 中井教育長
- 先ほど担当部長からもお話をさせていただきましたとおり、三月九日の総合教育会議で副校長のなり手不足の話、そして、これとあわせて、一般教員の働き方の改革が必要であるといった議論もされたわけでございます。現状の認識、そして、これからの方向性について、そういう面では知事と思いを共有したというふうに私どもは考えております。
これからは、その実行に向けての取り組みを東京都教育委員会としてしっかりと具体化していくということだと思っております。
先ほど、IDカードによる勤務時間の管理について、都立学校においては実施に向けて関係するところと今協議をしております。こういった形で具体化が進んでいきますので、そういった過程の中で、区市町村の教育委員会、小中学校についても都教育委員会として働きかけは当然していくことになるということで、前に向いてしっかりと取り組みを進めていきたいというふうに思っております。 - 石川委員
- 常識的に考えれば、先生方は、いわゆる残業手当がない、これは今はもう、それはそれなりに、そうではないというふうに思っている人も多いかもしれませんが、これは我々の世界では一応常識の範囲に入るかと思いますけれども、タイムカードもしっかりと、出勤して、そして帰るときがきちっと記録をされていないということについては、多分これはやはり、ちょっと常識から外れているんじゃないかな、私はこういう判断をするところでございます。
そして、そのことについては、都立等々含めて、都の教育委員会の中については、今、教育長が発言をされたような方向で当然整理をされるわけでありますけれども、やはり東京都全体、さまざまな区市町村含めて教育委員会があるわけですけれども、その中でやはりこの問題についてはきちっと方向性を出していく。その先頭にやはり教育長には立っていただきたい、このことを改めて求めておきたいと思います。
特に、我が国の学校現場では、自己肯定感がある児童生徒が諸外国と比べて極端に小さく、教師でいることに満足感のある教員の現状を改善していくためには、まず教員の働き方の実態を明らかにし、負担を小さくできるものは実行し、結果として子供も教師も保護者も満足感を高められるよう、現実的な改善が求められることを指摘しておきたいと思います。
いずれにしろ、教員もライフワークバランスの施策を徹底させる対象であるということを申し上げ、また、そのための改善を求めておきたいと思います。
最後に、東京都教育施策大綱について伺います。
東京都教育施策大綱は、東京都の教育施策の根本方針を定めるものであり、総合教育会議において知事と教育委員会との協議を経て、知事が策定するものと位置づけられております。
大綱では、世界で活躍できる人材の育成という項目の中で、生きた英語を学ぶ環境の充実、伝統と文化を重んじる日本人としての自覚と誇りを涵養する取り組み、子供たちの国際感覚を醸成する取り組み、国際色豊かな教育環境を整備し、多様な価値観を理解し、豊かな教養と世界で活躍できる語学力を備えた人材を育成する都立学校を設置するとしております。
教育にはモデルが必要というふうにいわれております。最近は、個人主義的な傾向がますます強くなってきているといわれております。自分のことだけではなくて、人を思いやり、集団をまとめていくリーダーが必要なわけであります。リーダーの育成について都教育委員会はどのような教育を推進していこうとしているのか、お伺いいたします。 - 安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
- 今般策定されました教育施策大綱には、目指すべき子供の姿として、グローバル化の進展の中でたくましく生き抜く人間が掲げられております。
都教育委員会では、これを踏まえまして、子供たちに生きる基盤となる力を確実に身につけさせるとともに、積極的にコミュニケーションを図る態度や、柔軟な思考に基づいた新たな価値を創造する能力などを育成する教育を推進してまいります。
具体的には、都立高校において実践的な英語を身につけさせ、国際社会で活躍するグローバルリーダーを育成する東京グローバル10の取り組みを着実に推進するとともに、平成二十九年度からは、知的探求力や想像力などを身につけさせる知的探究イノベーター事業などを新たに進めていくこととしております。 - 石川委員
- 東京都教育委員会は、グローバル人材の育成を目指して、将来さまざまな分野で活躍し、日本や東京の未来を担うリーダーの育成の取り組みとして、平成二十四年度から都立高校生を対象とした海外留学支援事業である次世代リーダー育成事業をスタートさせております。そして、終了後に知事と交流する機会なども持たれて、その意気込みが伝わってくるわけであります。こういった海外文化体験は、大きな刺激となってリーダー育成に寄与するといえるわけであります。
ただ、どうしても語学研修を中心とした適用型の事業という限界もあります。ですから、それだけでなく、生徒自身が目標を設定し、学校集団をまとめ、目標を達成するために生徒同士が調和を図りながら努力をするプログラムが求められます。そういった日常的体験の積み重ねも重要で、学校、地域、日本、そして世界を引っ張っていくリーダーを育成していくことにつながっていくといえるわけであります。
都教育委員会は、毎年度、すぐれた活動を行った都立、公立学校に在学をしている児童生徒等を表彰していることは、私も卒業式などにも参加をしておりますので、承知はしているところでございます。ぜひこういった表彰に、リーダーとして活躍した児童生徒を一層評価し、表彰することでリーダー育成の一助となる取り組みを推進していただくことを表明し、また求めておきたいと思います。
最後の質問に移ります。
大綱の中で、社会的自立に必要な力を育む教育の推進が位置づけられております。その中では、人権教育、道徳教育、キャリア教育が挙げられております。
そこで、大綱ではどのような考え方で社会に出るための準備が位置づけられているのか伺います。また、今起きている、一、二年で会社などを退社してしまう傾向に歯どめをかけることも学校に求められる使命と考えますが、大綱に基づき、都教育委員会は高校においてどのような教育を推進しようとしているかお伺いいたします。 - 安部教育政策担当部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
- 教育施策大綱には、子供たちが社会とのつながりを自覚することが必要であるとの認識のもと、子供たちの社会的自立のため、自分らしい生き方を実現するキャリア教育を推進し、職業の基礎的な知識や仕事に向かう意欲、態度などを育む教育を充実する方針が示されております。
こうした大綱の考え方を踏まえ、都教育委員会では、今年度から人間としてのあり方や生き方を考える都独自教科、人間と社会を全都立高校において実施するとともに、平成二十九年度から基礎学力の定着を重視する都立高校において、生徒の進路実現に努力しようとする意欲を喚起するゆめナビプロジェクトを実施するなど、社会の中で自立して生きていく力を育成する教育を推進してまいります。 - 石川委員
- 入社後、一、二年でやめてしまう一番の理由は、休暇や休日に関することと調査でも明らかにされております。このことは、就職前に、就職先の情報が十分に把握をされていなかったり、あるいはまた、情報が間違っていたりというような可能性もあるわけでございます。まさにライフワークバランスを考えたときに、イロハのイに当たる問題といえるわけであります。キャリア教育や進路指導の中で就職に向けた準備を十分に行う取り組みを求めておきたいと思います。
また、あわせて、学校での体験と異なる、現実社会の価値観の違いをしっかりと理解をするための準備というものも求められるのではないかと思います。学校では、やはり一人一人を育成するということですけれども、企業等々に入っていけば、その企業のためにどれだけ使命を果たせるのかということで価値観がかなり変わっていく。そういったことに対する心の準備、考え方の転換ということもやはり当然必要なわけでありますけれども、なかなかこれがし切れない。自分中心で社会にそのまま出ていってしまって、結果として挫折をするというようなケースも非常に多いわけでありまして、こういった準備もしっかりと今後実施していただきたい。このことを求めて質問を終わります。
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